2001年3月6日NHKの教育テレビ「にんげんゆうゆう」という番組で、我々の二番町赤坂台診療所が「小さな診療所」として紹介されました。その番組のなかでは11カ所もの病院で診療を受けても良くならなかった「うつ病」の患者さんが、「小さな診療所」で医師にゆっくり話を聞いてもらい、適切な助言と薬物療法を受けてたちまち良くなったケースが紹介されています。現在当診療所には「うつ病」の患者さんが大勢受診されていますが、それは「うつ病」が不眠症の一つの原因だからです。
 今回は、「うつ病」について簡単に説明いたします。
  「うつ病」はいうまでもなく、気分がゆううつになり何かしたくてはと焦れば焦るほど行動する意欲が無く、朝起きても熟睡した感じがなく起きるのも嫌になったり、学校や職場に行くのも億劫になるという病気です。人によってはもう治らないのではないかと悲観的に考えたり、自分は生きている価値のない人間だなどと思い詰めて、自殺を考えたり実行したりすることもあります。
 発病初期には気分のゆううつさを訴えるよりも、「なんとなくだるい」「胃の具合が悪い」「食欲がなく、味がない」というような体の不調を訴えて、内科など受診し検査した結果医師からもなんともないと言われることが多いようです。また夕方になると朝より幾分か気分が良くなるように思えるのも一つの特徴です。これを日内変動といいますが、気分のゆううつさに加えてこのような症状があったら「うつ病」と疑って、専門医に受診したほうがいいでしょう。
 「うつ病」の原因としてはストレスが一番多いようですが、喪失体験も大きな要素になります。喪失体験とは親しい人との死別などのことですが、最近は可愛がっていた犬や猫の死をきっかけに発病する人もおおくみるようになりました。いわゆる更年期といわれる時期も若さの喪失という意味では喪失体験といえるでしょう。また長い間の念願だった新居が完成して引っ越しをしたとたんに発病する人もいますが、これも一種の「目標の喪失」体験ともいえると思います。
 現在のようなストレスに満ちた社会生活の中で、特に几帳面・生真面目・勤勉ないわゆる神経質な人にとっては、毎日のストレスを運動・趣味などでうまく気分転換しておかないと、精神的な疲労が蓄積しやがて誰でもが「うつ病」になる可能性があります。
 「うつ病」は今の医療では必ず治る病気です。
 その治療は第一には薬物療法ですが、最近の医学の発達によって脳内の神経伝達物質が発見され、ゆううつな時の脳内物質の過不足も解明されて、理屈にあった薬が数多く発売されています。そのためには良くお話を聞いてくださる医師を探して、その人に最も適切な薬を探してもらうことが大切です。精神療法を通じて医師と患者さんが信頼関係で結ばれることで、薬物の効果がさらに高まることが期待できるからです。