今年のフランスは何年ぶりかの好天候に恵まれ、空は原色のブルー・ブルー。夜窓から月が入ってくると、その明るさと美しさに感動の溜め息をフッともらしたりして、こうなると不眠症もまんざら悪くないなと思ってしまう。
 紅葉も日本のような繊細さには欠けるとしても、大木がどんどんとおおらかに紅葉していく様はやはり美しい。こんな秋晴れのなか友人と共にフランスのブルターニュ地方サン・マロからモンサンミッシェルへと小旅行をしてきた。サン・マロに行く途中立ち寄った友人の家で、この地方の名物であるクレープ(クレープといっても日本のデザートようの甘いのではなく、正確にはガレットというのだが)をご馳走になった。ガレットは小麦粉のかわりにソバ粉を使うのでとても軽くてパリット香ばしく、中に目玉焼きをいれたり野菜を入れたりでなんでもよいのですがやはりチーズは欠かせない。さらに欠かせないものとしては、シードルというこの地方独特のリンゴの発泡酒(ようするにリンゴで作ったビールのようなもの)がある。これをドンブリのようなものに入れて飲むのだが、ここで面白い体験をした。というのは友人が飲み残しのシードルに小さなサジを立てたのでそれはなんのためなのですかと聞くと、こうしておくとブクブクが抜けないというのである。少々眉唾だと思いながら、家に帰ってさっそく試してみると不思議とこれが本当だったのである。私はすっかりこれにはまってしまい私の冷蔵庫は小さな魔法のスプーンだらけになってしまった。カン入りの炭酸もスプーンを立てておくと香が抜けないような気がするが、カンの味がでてきてしまうので私はすぐビンに移すことにしている。もちろんその場で全部飲んでしまってもかまわないのだが、人生はやはり面白い方がよいので私はわざと少し飲み残して魔法のスプーンが冷蔵庫の戸を開けるたびに奏でるリンリンという音とシュワ・シュワを楽しんでいる。

キョウコ・Y